Voice of Identity 〜アイデンティティを示す声〜

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2016年6月、日本で初めてヘイトスピーチへの対策を目的とした法律「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」(「ヘイトスピーチ解消法」)が施行されました。しかしインターネット上や街頭での在日コリアンをはじめとしたマイノリティを標的とした差別扇動・ヘイトスピーチなど、差別的な言動に関する事件はいまだに収まる気配はありません。

差別扇動・ヘイトスピーチの害悪は著しく、ヘイトスピーチによる攻撃の対象となる在日コリアン、マイノリティにとっては、自己否定、絶望感、恐怖、過剰適応、心身不調や行動制限など、精神的にも社会生活にも深刻な被害をもたらすものとなっています。

在日コリアンの若者たちは、なぜ自分たちが差別されるのか、どのような歴史の上に今の自分がいるのか、自分のアイデンティティはどこにあるのか、を知るために、自分の親やその上の世代の人々の経験や歴史などを聞く機会が極めて少ないという現状があります。

なぜならば、社会的な不利益を被るのを避けるために自らの出自を明らかにしない在日コリアンも多く、親や家族、友人たちとそのような会話をする機会が持てないということが、大きな原因となっています。また、自分が生まれる前に両親が日本国籍を取得した場合は、自分の出自を教えてもらえない、ということもよく聞く出来事です。

この「Voice of Identity 〜アイデンティティを示す声〜」は、様々な世代の在日コリアンへの「個の歴史」のインタビューを映像として記録し、またその背景となる歴史的な経過を知る史料をアーカイブとして残すことで、ヘイトスピーチの被害者である自分自身のアイデンティティを見つけ、再確認し、この社会で生きる自己を肯定し、希望や安心を持ってこの社会で生きて行くための一助になることを目指しています。